仕事が出来る人に共通していることの一つはロジカルシンキングを活用していることです。ステップさえ覚えれば難しくないので、ぜひ本稿で紹介する雲・雨・傘の考え方を徹底的に実践して欲しいと思います。必ずや職場の同僚から頭一つ抜け、いち早い昇進の武器となるでしょう。
雲・雨・傘の考え方とは
早速ですがロジカルシンキングの分かり易い例として、雲・雨・傘の考え方を紹介します。
「空に雲が出ている」という情報は『事実』です。
自分だけではなく、多くの人が客観的に真実だと認定する事象のことを言います。
「雨が降りそうだ」という情報は『推論・解釈』です。
全ての人が同意するわけでも、100%確実にそうなるわけでもない意見のことを言います。
「傘を持って行こう」という情報は『判断・提案』です。
事実と推論・解釈に基づき決定した行動のことを言います。
上記の説明が一番大事なポイントですが、雲・雨・傘はそれぞれ混合し易い難しさもあります。混乱したら落ち着いて考える様にしましょう。
アウトプットを最大化する
ロジカルシンキングを活用する目的は、業務におけるアウトプットを最大化することが通常です。雲・雨・傘でいうと傘の部分、どう行動し業務を最大成績でやり遂げるか、が最重要であり会社での評価にも繋がります。
ただ、効果的な傘(アウトプット・行動)を導き出すためには、的確な雲(事実)の把握と最適な雨(推論・解釈)が必要不可欠です。雲・雨・傘の全てを極めてこそ、アウトプット最大化が可能になります。
ここからはそのノウハウについて紹介します。
事実と意見を明確に分ける
事実と意見はともすれば混合しがちです。最初のステップとして出来る限り多くの雲(事実)を集めることが肝要です。事実に基づき、「推論・解釈」、「判断・提案」のステップへと続きますので、適切な対応をとるためにも事実は多いに越したことはありません。
実際に私の勤務経験上でも間違った意見をさも事実の様に伝えてしまう例は枚挙に暇がありません。よくあるパターンは誰かに聞いた(もしくは引き継いだ)ことを事実として妄信的に信じてしまい、根拠や目的をなおざりにしてしまうケースです。
意見や目的達成のための手法は絶対的なものではなく、人によって異なるものです。アウトプット最大化のためには、まず正しい「事実」を収集する様にしましょう。
効果的な推論・解釈のポイント
事実収集の次のステップが雨(推論・解釈)です。ここからは人によって意見が異なりますので、要はその人の能力・実力が反映され、仕事の評価にも結び付くことになります。ただ、効果的なコツはありますので紹介します。
- 専門家に聞く
餅は餅屋ということです。雲の情報を見て、雨の降る確率を一番精度高く予想出来る人は気象予報士に違いありません。個々の課題により、一番詳しそうな人を探して、意見を聞きましょう。
一見他力本願の様にも思えますが、人脈や専門家を見抜くスキルも立派な能力です。普段から意識して周りの人と仕事をしていなければ、誰が詳しいのかも分からないものです。
いざという時に支援を貰いやすい様、他部署とのコミュニケーション時にはメールではなく、直接顔を突き合わせて人脈形成しておくといった配慮も大事だったりします。
私の経験からも言えますが、コミュニケーションが苦手なのか出来るだけ人に聞かずに自分で判断しようとする人も多いです。そういった人は実は仕事の能力は平均より高かったりします。高いが故に過去の成功体験やプライドが邪魔をし、聞くこと自体が苦手なのかもしれません。
ただ、周りに聞けない人は必ずや早い時点で成長が鈍化します。当たり前の話ですが、一人の知識よりも多人数の知識総量の方が多いからです。いち早い自己成長のためには、どんどん周りに聞きながら、知識を自分のものにしていきましょう。 - 過去の事例を調べる
大げさに言うと「歴史は繰り返す」という考え方です。雲が以前と全く同様の広がり方をしているのであれば、以前同様の天気へと変わっていく確率は高いと言えるでしょう。
ただ、仕事の場合は過去の慣習に囚われるのは改善がない落とし穴とも成り得ます。あくまでも、参考情報として過去の事例を確認することをお勧めします。
実際、過去の判断は何らかの根拠や目的があって決めているはずなので、何もヒントがない状況よりも、参考になる情報が見つかることが多いです。全く同じ判断をする必要は勿論ありませんので、過去の事例を活用しながら、今回の判断を決定する様にしましょう。 - 経験値を上げる
若手に多いのですが、何か分からないことがあると直ぐに「どうしたら良いですか?」と先輩や上司に聞いてしまう人がいます。勿論、専門家に聞くことは悪いことではないのですが、自分で何も考えずに丸投げの様な形で聞いてしまうのはNGです。
能力開発のコツは自らのレベルよりも難易度が高い課題を繰り返し達成していくことにあります。分からない課題への直面は自らの成長のチャンスです。必ず一度自分自身で事実を収集し、推論・解釈の仮定を立ててから、周りの意見を参考にする様にしましょう。
自ら考える癖をつけることで、意見収集時の知識吸収も早くなりますし、仕事に対する責任感醸成にも繋がり、成長が早くなるはずです。
アウトプット(判断・提案)のポイント
最後に傘(判断・提案)です。せっかく収集した事実や推論・解釈も適切な行動によるアウトプットなしには水の泡となります。誤解を恐れず言うと、会社にとってはアウトプットが全てです。それまでの経緯は人材育成等の間接的意義こそあれ、直接的な会社便益にはなりません。
ここではアウトプット最大化のためのコツを紹介します。
- スピードを重視する
仕事が出来る人に共通しているのは「仕事が早い」ということです。一つの仕事を早く終わらせることが出来れば、次の仕事に取り組めますので、人より多くの仕事をこなすことが出来ます。同様の期間でより多くの仕事をこなす人が会社に評価されるのは当然です。
そもそも、会社の経営層はビジネスの厳しさを知っていますのでスピードの重要性を理解しています。昨今の技術発展著しい情報化社会では、刻々と変化する環境に素早く適応・変化し、先行者利益による高い収益性を確保することが重要です。
そのため、ビジネスでは100点で遅いアウトプットよりも、80点で早いアウトプットの方が評価される傾向にあります。勿論、期待レベルを超えるアウトプットを達成することが条件にはなりますので、その期待レベル(最低レベル)がどの程度なのかを理解する目利きも重要です。
期待レベルの判断は経験による習得が大きいところがありますので、初めの内は上長に進捗相談をしながら進めることをお勧めします。 - 費用対効果を分析する
取るべき行動が決まったら、必要な費用と期待する効果を定量的に数値で示せる様にしましょう。これは営業や経理等の数値を扱う部門のみに言えることではなく、総務・技術・製造等も含めて全部門に共通することです。
何故なら、ビジネスにおいてはどんな活動にも費用が必ずかかります。課長級以上は一般的に自部門の予算管理をしていますので、判断の際には発生コストの確認が必要です。なにより、期待効果額よりも必要費用が多い様な決断は通常あり得ないことです。
また、オプションが複数あるのであれば、費用対効果のリターンが大きいものを選ぶことも出来ますし、説明に具体性や納得性が出てきます。慣れない人は定量的分析までは出来ないことが多いので、周りと差をつけることも出来ます。
経営層ほどビジネスを定量的に分析しているものなので、普段から数値を意識して業務に取り組む様に心掛けましょう。 - 当事者意識を持つ
判断・提案による行動は出来る限り自分自身で率先して実施しましょう。ビジネスは幾らでも他責にも自責にも出来るものです。ただ、他責にする癖がついてしまっている人は成長しませんし、周りにも直ぐ分かるので期待されません。
自責で考える人は経験を通して学ぶことが出来ますし、周りの信頼を得て仕事を任されることで更に成長します。
もし、ベストな回答が自分の職務範囲外のことだったとしても、他部門のことだからと放置するのではなく、自らがきっかけとなり働きかけることでアウトプットを達成すれば良いのです。勿論、上長や人脈を通しての行動であっても、最終的にはアウトプットさえ達成出来れば会社としては満点です。
常に「自分の立場で何が出来るか」の観点で当事者意識を持ち、行動する様に心掛けましょう。
最後に
以上がロジカルシンキングであり、雲・雨・傘の考え方です。万事に当て嵌まるとは言えませんが、特に課題に直面した時や新しい業務を任される時に参考になる部分は多くあるはずです。普段から意識して取り組んでみて下さい。
本考え方を通して、皆さんの業務の品質向上に少しでも役に立てますと幸いです。